SMBC日興証券株式会社
人事部DE&I推進室
中城 千鶴さま
▼目次
目指しているのは「多様なキャリアの実現」
介護を「自分ごと」として捉えてもらうことが大切
多様な社員に届けるためにー継続し、段階的に広げるコンテンツ設計
当事者だけではなく管理職への浸透を目指す
「多様なキャリアの実現」という組織のビジョンを土台に、仕事と介護の両立支援を進めているSMBC日興証券様。
社員と会社との双方向のコミュニケーションを重視し、介護だけでなく、育児、傷病、ライフイベントも含めて「制約」と捉えず、自分らしく働き続けられる環境を整える施策を行っています。
本記事では、取り組みを担うDE&I推進室の中城様に、
両立支援施策設計のポイントと社内に浸透させていく工夫などを伺いました。
– まずはDE&I推進室でどのような取り組みをされているのか、教えてください。
【中城様】
「多様なキャリアの実現」に向け、様々な取り組みと支援制度の整備を行っています。
具体的には、女性社員のキャリア支援、育児と仕事との両立をしやすくする環境整備や補助制度の運用、介護に携わる従業員の両立サポート、障がい者雇用の促進など、共生社会の実現に向けても取り組みを進めています。
私たちの担当領域は年々広がっており、サステナビリティや社会的価値創造、エンゲージメント向上といった観点からも施策を実施しているところです。
- 幅広い領域の中で、仕事と介護の両立支援に注力されようと思われた理由は何だったのでしょうか?
【中城様】
介護については、仕事と介護の両立が必要な社員が、今後ますます増えていくことが予想されているにも関わらず、両立に関するリテラシーが十分に浸透していないという課題を感じていました。
多くの社員にとって「自分にはまだ先のこと(だから、関係ない)」「いざとなったら考えればいい」と捉えられているのではないかと。
しかし、実際には、それでは遅い、ということが起こりえます。
事前に、相談先や利用できる制度を知っていることが両立のカギになりますから、介護を「自分ごと」として捉えてもらうことが非常に大切だと考えています。
そうした考えから、制度の整備だけでなく、社員のリテラシーを高める機会の提供にも力をいれていきたいと思い、チェンジウェーブグループにご相談しました。
– 2022年には、仕事と介護の両立に関する基礎セミナーを実施されました。実施の背景を教えてください。
【中城様】
弊社では、全国転勤の可能性がある働き方をしている社員も多いのですが、介護が理由で転勤できず、結果的に退職を選んでしまうというケースもあるのでは、と、以前から危惧していました。
介護は、まだ自分から周囲に話す方が少ないように思いますし、周りも気づきにくいのではないかと感じています。
「話すきっかけがない」「必要な情報が入ってこない」
そうした状況を変えたいという思いがあり、例えばハンドブックのように”読む情報”だけではなく、リアルな話を”聞く機会”を提供したいと考えました。
-ご参加くださった方々の反応はいかがでしたか。
【中城様】
講師の酒井さん(チェンジウェーブグループ・酒井穣)のお話が非常にわかりやすく、有益だったこともあり、社員から多くのポジティブな反響がありました。
「セミナーをきっかけに会社の両立支援制度を改めて調べてみた」といった声もあり、制度の認知にもつながったようです。
また、実は介護経験がある、という社員や、今まさに不安を抱えている、という社員が多くいることも見えてきて、人事部門としても実態把握のきっかけになったと感じています。
– 弊社は「まず何から始めればいいですか?」というご相談を多くいただきます。貴社では全社員対象のセミナーから始められ、段階的に進めていらっしゃいますね。
【中城様】
もともと弊社では、介護休暇制度や24時間利用可能な外部相談窓口の設置など、環境整備は進んでいました。ただし、どちらかというと「すでに介護に直面している社員が、自分で調べて活用する」ことが前提の仕組みになっていたように思います。
しかし、介護は誰にでも起こり得ることであり、今は当事者でなくても、いつか直面する可能性がある。いつ当事者になってもおかしくない、という側面があります。
そう考えると、「必要になってから」ではなく「その前から知っておく」ことが大切だと思いました。
だからこそ、知識としてまずはしっかり頭に入れてほしいと考え、全社員を対象にリテラシー向上のためのセミナーを実施することにしたのです。
また、この問題は当事者だけのものではありません。同僚や上司にも一定の理解がないと、職場での両立支援が機能しない、意図しない結果を生んでしまう、という場合があります。その意味でも「各自で見てください」という形ではなく、こちらから積極的にプッシュして届けるようにしました。
-介護に関する 基本セミナーの実施後、翌年はテーマ別(認知症、遠距離介護)の講演も実施されましたね。
【中城様】
2022年は「両立の基本」をテーマにした、リテラシー向上のためのセミナーでしたが、2023年は認知症や遠距離介護に焦点をあて、より具体的な内容で開催しました。
2回連続で参加した社員もいれば、今回初めてという社員もいたため、基本的な内容を交えながら構成していただきました。
今回も「とても参考になった」という反響が多く寄せられたのですが、同時に「(前回の)基本セミナーをもう一度聞きたい」という問い合わせもかなりありました。
当然かもしれませんが、社内には「基本を知りたい人」と「より深堀りして聞きたい人」が混在しています。社員のニーズや状況に応じて、提供する内容をどのように設計するかが重要だと改めて感じました。
– おっしゃる通りですね。
まず「仕事を軸に、両立を考える」という意識の土台を作ってから、知識を持っていただく。そのうえで個別に必要な知識やサービスを取得していただく、という流れが基本かと思いますが、その提供方法・内容には工夫が必要です。
当社のラーニングプログラム「LCAT」で、受講者のセグメントに合わせた情報をプッシュ配信しているのには、そうした理由があります。
【中城様】
そうなんですね。本当に参考になるコンテンツとは何だろう、社員が満足できる両立環境とはどのようなものだろう、と、常に当事者意識を持って考え続けたいと思っています。
【中城様】
今回、SMBCグループ全体で「両立に関して、該当者にどんな知識が必要なのか」を検討し、情報を一元化した介護に関するハンドブックを作成しました。
また、両立において重要なのは、やはり管理職の理解ではないか、という思いから、弊社独自の管理職向けのハンドブックも作成しました。介護だけでなく、育児や傷病との両立も含めた様々なケースに対応する内容です。
例えば、部下から両立に関する相談を受けた時に、どんな声掛けをするのが良いのか、何に注意したら良いのか、といった内容を掲載しています。
– それはとても実践的ですね。
【中城様】
ありがとうございます。
介護は、育児のように目に見える変化が起こりづらいので、周囲の理解や気づきが特に大切になってきます。
にも関わらず、管理職でも介護経験者は少ないかもしれません。自分より年上の部下が介護に携わるという可能性もあり、関わり方に戸惑うこともあると思います。そのようなケースに備えて、必要なときにさっと活用してもらえるハンドブックを作りました。
ただ、こういったコンテンツを作っただけでは意味がありませんので、継続的に紹介し、意識してもらうことが大切だと考えています。
– 管理職の方々に対しては、どのようなメッセージを発信されていますか?
【中城様】
やはりコミュニケーションが1番重要だと考えています。
「こういう時はこうする」といった固定観念、型にはめるのではなく、本人の希望や状況をよく聞き、丁寧に対話して調整していくことが大切です。
たとえば、管理職が「配慮」で休暇を取ってもらったとしても、本人が本当は望んでいないのであれば、すれ違いが起きてしまいます。キャリアが阻害されたと考えてしまうかもしれません。
一方的な「傾聴」や「気遣い」ではなく、双方向の対話を大事にしてほしいと思っています。
人事部としても、各部門と連携しながら適切なタイミングでアドバイスを入れたり、インプット、コミュニケーションの機会を設けたりしながら、実効性のある支援を続けていきたいと考えています。
ーセミナーの開催をきっかけに実態を掴み、次の一手につなげていく。
双方向のコミュニケーションを大切にしながら、社員の多様な状況に合わせたアプローチを検討・実施されている姿勢に深く共感しました。
社員の声に耳を傾け、届け方を工夫しながら全社に両立支援を浸透させていく実践、素晴らしいお取り組みですね。
貴重なお話をありがとうございました!
(インタビュー:チェンジウェーブグループ 鈴木富貴)
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