エムケー精工株式会社
代表取締役社長 丸山 将一 様
取締役管理本部長 酒向 邦明 様
人事部 人事課長 竹内 映 様
※ 肩書はインタビュー当時
▼目次
介護は地方企業の人材戦略・採用課題に直結している
人事課題に優先順位はつけないーー「待たずに動く」
情報が「行き渡る仕組み」をつくる3つの手段
知識を“行動”に変える、「出口」を設計する
2025年4月から施行された改正育児・介護休業法では、事業主に対して、研修の実施や40歳以上の従業員に対する情報提供が義務化されるなど、両立支援に本腰を入れる必要性が高まっています。
この動きを先取りし、両立支援セミナーやオンラインの相談窓口の設置など、積極的な取り組みを進めているのがエムケー精工株式会社様です。
「社員が介護に直面しても、働き続けられるように」
「なるべく仕事を休まずに両立するための知識習得と支援体制を」
ーーそんな経営陣の想いから始まった取り組みは、単なる制度の導入に留まらず、社員の行動変容を促す仕組みとして構築されつつあります。
本記事では、同社代表取締役社長・丸山将一氏にもインタビューさせていただき、「仕事と介護の両立支援」をいかに経営戦略として進めていくかについてもお話を伺いました。
– 仕事と介護の両立に取り組もうと思った背景をお聞かせください。
【 丸山様】
介護への対応は遅れない方がいい。むしろ、少し先に踏み出しておいた方がいい、と考えています。
以前から私は、多様性を尊重した職場づくりに強い関心を持っていました。その中でも特に、「女性の活躍」や「仕事と介護の両立」問題は、職場の心理的安全性や生産性に深く関わっていると感じています。
実は私は2010年に当社に入社し、2012年に社長に就任したのですが、長野に来てから家族の介護で苦労されている方と出会い、「地方では仕事と介護の両立支援が進んでいない」と痛感しました。
企業の健康経営度調査項目に介護との両立支援が追加されたのがちょうどその頃だったということもあり、まずは社内で実態を調べてみることにしました。すると結果は予想通り…というか、予想以上でした。かなり多くの社員が、すでに介護に関わっていました。
– 経営という観点からも影響が大きいと考えられたのでしょうか。
【丸山様】
そうですね。両立支援の課題は、採用にも大きく関わってくると考えています。当社がある長野県は、県内に大学が少ないため、進学をきっかけに若年層が県外に出て行ってしまう。女性の流出も激しいんです。
ただ、そうした中には、その後介護のためにUターン就職する方もいます。その時、両立支援の仕組みが整っていれば、企業としての魅力になるはずです。
私は県の人口減少対策会議のメンバーでもありますが、人口問題の中でも介護との両立支援は非常に本質的なテーマの一つです。
企業としては、働きやすい、そして働きがいのある環境を整えて人材を引き寄せる力を持つべきですし、1社だけが取り組むのではなく、地域全体で底上げすることも大事だと思っています。
– 人事課題は多様であり、取り組むべきことも多くあります。どのように優先順位をつけていらっしゃいますか。
【丸山様】
結論から言うと「人事施策は全部やる」です。すべて重要ですから。
子育て支援、女性活躍、介護との両立、採用……優先順位をつけるというよりは、それぞれのテーマの中で、今、何をやるべきかを判断し、着実に進めているというイメージです。 行政からも「やっていますか?」ではなく「やるべきです」というメッセージが送られているのだと感じていますし、だからこそ、認証などの取り組みについても「待たずに先に動く」ようにしています。
– 判断される際に意識されていることは何でしょうか。
【丸山様】
やはり採用に関わるところは注視しています。採用のホームページを確認し、どんな施策を行っているのか全て棚卸しをして、他社の動向とも比較します。
常に半歩先を行く、という気持ちでいます。できるのに遅れている、という見方をされるのはもったいないですよね。
「長野県で初の取り組み」を目指すことで、地域全体をけん引できる。発信力にもつながります。早く始めるからこそ、着目されるのだと思います。
– 人事施策で重要なのは、社員に「届く」こと、そして「動いてもらえる状態にする」ことですが、なかなか難しいのも現実です。
貴社では緻密な工夫を重ね、従業員の方の「行動」に結びつけていったそうですね。
【竹内様】
今回、チェンジウェーブグループに依頼して、両立支援セミナーを初めて実施しました。
まず決めたのは、参加対象を本社管轄の部署とすることです。PC環境が整っていて、スケジュールを調整できる部署なので、参加しやすいというのが理由です。
1週間いつでも見られるアーカイブ配信にしていただいたので、視聴時間が調整しやすかったのも良かったです。
また、各部の管理者に対しては、全員受講するよう指示しました。受講確認、事前アンケート、視聴事後アンケートなどの報告リストを提出する形にしたこともあって、全員期間内に視聴できたのだと思います。
– 受講を任意にしないこと、受講状況を把握することで「受講率100%」にされたんですね。
一方、全員に情報提供することを考えると、また違う難しさがあると思います。どのような工夫をされていますか。
【丸山様】
我々の基本的な連絡ルートは3つあります。
1つめは社内ポータルサイトと社内報です。PC保有者は全員が閲覧できるようになっています。製造ラインの社員は職場にPCを持っていないので、印刷して職場に掲示しています。
この方法で、管理部からの発表は、全国に同じタイミングで知らせることができるようにしています。
2つめはメール送信です。ただ、メールは厳選し、なるべく減らす方向にしています。メールの総数を減らさないと、1通の価値が下がってしまいますので。
3つめは、会議体での共有です。役員会、営業会議、研修などの場で話すようにしています。「後日また連絡するよ」と一言でも伝えておくことで、「連絡がくるんだな」という意識につながりますから、「話題にする」ということが大切です。
これら3つを組み合わせて、全社員への等しい情報提供を徹底しています。
【酒向様】
一元化した発信側がしっかり情報を整え、それを全員に送るというのが1番早く伝わる方法だと考えて実行しています。
社内掲示板できちんと周知する、各部署のキーパーソンとなる管理職に電子メールを一斉送信し、必要に応じて電話でフォローする。基本的なことですが、これらをきちんと行っていくようにしています。
– 従業員の方々の反応についてはどのように感じられましたか。
【丸山様】
セミナー後のアンケートで「介護に対する考えが変わった」という感想が多くあったことについては、ポジティブに捉えています。前向きな気持を持つことは大切です。
ただ、大事なのは、学んだ後に一歩踏み出せるかどうか、です。 知識を習得しても、行動が伴わないと長続きしません。さらなる理解が進まないと思っているので、今後の行動を促していきたいと考えています。
– 弊社ではよく「出口」と呼ぶのですが、例えば地域包括支援センターの電話番号を調べて登録する、サービスを検索してメモしておく、など、小さくても1つは行動をしていただくのが良いとお伝えしています。 丸山社長はどのようにお考えでしょうか。
【丸山様】
行動をすると変わりますよね。これは何でもそうだと思います。
子どもに「勉強しよう」と言っても、疲れているときなどは中々始められない。けれど、嫌々であっても机に向かった瞬間、切り替わったりします。介護も同じかもしれないです。
例えば、実際、病院に行くための車を手配しなければいけないとなったとき、どこに電話をしたらいいのかわからない、どのような業者があるのか、どこを選べばいいのかという基準もわからないということは誰にも起こり得ます。
けれど、1回調べておいたり、行動してしまえば、2回目からは楽になる。
まずは地域包括支援センターについて調べるなど、一度行動につなげることで、セミナーで学んだ内容もさらに深く理解できると思います。
今後も、社員が行動につなげられる取り組みを続けていけたらと考えています。
ー仕事と介護の両立支援は、単なる制度導入では終わりません。社員が必要なときに制度を使えるようにする、適切な知識を持って主体的に動けるようにするための「行動支援」が問われています。
エムケー精工様の事例は、どのように従業員の行動を促していくのか、また、経営層がコミットメントを示すことの意義を示してくださっていると思います。
本日は本当に貴重なお話をありがとうございました。
チェンジウェーブグループでは、仕事と介護の両立支援に取り組む企業に伴走し、施策設計から具体的なサービス提供まで、一気通貫にご支援しております。
・両立支援施策の設計
・人事、ダイバーシティ推進施策との連携
・全社向けセミナー、講演
・管理職研修
・オンライン両立相談窓口
など、貴社のご状況や課題に合わせてご提案させていただきます。
「どこから始めていいかわからない」と感じたら、事例紹介や情報交換から、お気軽にご相談ください。
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