導入事例

【企業事例】”初動対応”がカギ。誰もが「自分ごと」として考えられる仕組みとは-倉敷紡績株式会社様-

倉敷紡績株式会社

人事部長 丸毛様

人材開発課長 中村様

人事部 人材開発課 河村様

倉敷紡績株式会社では、事業所からの相談をきっかけに仕事と介護の両立支援を本格化しました。
この取り組みは、DE&Iを「誰もが関わるもの」という意識を醸成する契機にもなっています。
本記事では、施策導入の背景から実践内容、従業員の方からの反応などについて伺いました。

▼目次

介護は誰もが当事者になり得る問題

未介護層にも必要な「両立の考え方」「初動対応」を伝えたい、という想い

「受けてよかった」「心が楽になった」という感想が社員から届いた

DE&I戦略の中で“介護支援”をどう位置づけるか

講師の実体験が響いた~様々な両立の形・体験事例を共有したい

介護は誰もが当事者になりえる~40代以上の男性社員が当事者意識を持てる問題

【河村様】

弊社では、2019年からDE&Iに取り組み始め、本社と各事業所が連携しながら、それぞれの状況に応じた施策を展開してきました。

ただ、介護については、2017年に管理職向けの研修を実施し、その後は社内報でのトピックス記事掲載や社内制度をまとめたハンドブックへの情報掲載などにとどまっていたのが実情でした。

そうした中、ある事業所の総務担当者から「介護に関する研修を実施したいと考えているが、本社を含め、全社的に取り組んではどうか」という声が寄せられました。

詳しく聞いたところ、「親御さんの希望に応えて少しずつ介護を始めた社員が、気づけば負担が大きくなり、1人で抱え込むような状態になって苦しんでいる」というケースが、最近複数発生しているということでした。

現実に、そのような当事者が存在していることを知り、本格的に両立支援に取り組む必要性を感じました。

これまで弊社では、育児や女性活躍、LGBTQ+の方々の課題については多くの取り組みを行ってきました。

しかし一方で、40代以上の男性社員が当事者になり得る介護についての取り組みは十分とは言えない状況だったと思います。

このため、結果として「DE&Iって育児支援や女性活躍のことだよね」「部下に関することは大切だけれど、自分自身には関係ない」というような空気が生まれてしまったところがありました。

しかし、介護は誰もが当事者になり得る問題です。

「自分には関係ない」と思いがちな社員層に向けて、意識を変え、DE&I への関心を引き出す契機にもなりうると考え、取り組みをスタートさせました。

【丸毛様】

若手の男性社員から「母親の介護があるので、短時間勤務をさせてほしい」という相談がありました。非常に優秀な人材でしたが、勤務時間が限られることで、昇進に対しても積極的になれずにいたそうです。

しかし、施設の利用などを工夫して介護負担を下げ、仕事との両立に取り組んだ結果、現在は昇進し、活躍しています。

これまでにも両立している社員はいると思うのですが、本社としては、そうしたケースを耳にするのは初めてでした。 介護が社員のキャリア・昇進にも影響を及ぼす切実な課題であることを強く実感しました。

未介護層にも必要な「両立の考え方」「初動対応」を伝えたい、という想い

【河村様】

弊社はメーカーで製造部門があり、また交代制勤務の社員もいるため、全員が一堂に会して研修することは困難なため、オンライン研修との親和性が高いと考えていました。

また、内容を検討していた際、研修企画を提案してくれた事業所の担当者から「“初動対応”(まず誰に相談し、どんな選択肢があるのか、何を考えておかなければならないか)をしっかり伝えたい」という要望がありました。

2017年に実施した研修でも初動対応には触れていましたが、介護サービスの具体的な紹介が多かったんです。けれど、時代の変化と共に介護サービスそのものは変わっていく可能性があります。

それよりも、初動をどうすればいいのかという「考え方」を伝えることの方が、本質的に大切なことではないかと感じていました。それであれば、今、介護をしていない方にもしっかりと理解いただけるような内容になると思いました。

そのようなことから、初動対応、その前提で持っておくべき「両立の考え方」を適切に提供できる、という観点でチェンジウェーブグループを選びました。

「受けてよかった」「心が楽になった」という感想が社員から届いた

【河村様】

管理職向けに限定する選択肢もありましたが、「初動対応とその前提となる考え方を伝える」ことが目的でしたので、介護に直面していない潜在層にも届けたいと考え、全従業員を対象にしました。

業務の都合上、リアルタイム参加が難しい社員もいたため、アーカイブ配信も活用し、最終的には445名が受講しました。派遣社員も含め、多様な立場の従業員が視聴してくれたのは非常に良かったと思っています。

【河村様】

別の業務で役員と顔を合わせた時、「この間の研修、良かったよ」と声をかけられました。心が楽になったと話してくれたのが印象的でした。

DE&I関連の研修は年に一度実施していますが、「今回の研修は特に良かった」という反応がアンケートに多数寄せられました。介護の知識にとどまらず実際に自分の生活に活かせることであり、「自分ごと」として捉えられる内容になったのだと思いました。

また、「マネージャーとしてやるべきことがわかった」「地域支援包括センターにまず行こうと思った」など、研修のメッセージが的確に伝わったという実感がありました。

中には、すでに介護をしている方から「もっと早く知っておきたかった」「これまで知らなかった支援策があった。もう少しアウトソーシングも検討したい」といった声もありました。実生活に直結する内容だったことが、反響の大きさにもつながったと感じています。

DE&I戦略の中で“介護支援”をどう位置づけるか

【丸毛様】

2019年からDE&Iに取り組んでいるのですが、当初は「ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンという横文字自体に抵抗感がある」といった反応もありました。

施策としては、最初は育児との両立や女性活躍などから取り組み始めました。

時間が上手に使えるよう、フレックスタイム制度を導入。その後、コロナ禍にテレワーク制度を整え、働き方がガラッと変わりました。「柔軟な働き方」が当たり前になってきたことで、DE&Iの意義や重要性について理解されやすくなったと感じています。

その風土があったからこそ、今回の「仕事と介護の両立セミナー」も、以前よりずっと受け入れやすくなっているのではないかと思います。

私自身、介護に直面する年齢ですが、研修で受けたインパクトが以前より大きかったように思えます。

「仕事は仕事、家庭は家庭」という時代から、「ワーク・ライフ・バランス」を考えるようになり、現在、私達は「ワーク・イン・ライフ」に移行しようとしています。コロナ禍を経て、仕事と生活が切り離せないと実感している社員も増えており、その感覚が少しずつ社内に浸透してきています。

介護との両立に関しても、単に個人が対応策を知ればいいということではなく、会社として「知り、活用できるように支援する」ことが重要です。

今回のセミナーでは、それが社員のワークライフそのものを応援するというメッセージに結びついて伝えられたことがとても有意義でした。

【丸毛様】

DE&Iを推進することによって、活力ある組織風土を醸成する」ことを1丁目1番地にしています。DE&Iなくして今の当社は考えられないです。

女性・男性・ 障がい者・LGBTQ+…といった括りでなく、そもそも我々は一人ひとり違う人間です。個性も能力も家庭事情も違います。その前提をお互いに理解していかなければ、1つの企業体として成り立たないだろうと考えています。

そのうえで、特定の属性だから焦点を当てるのではなく、現実の声にもとづいて施策を展開することが重要だと思います。

今回、セミナー後に受講者アンケートを取りましたが、「現在介護をしている」と答えた方が10.8%、「今後5年以内に介護が必要になる可能性が高い」が39.1%もいました。

つまり、社員の約半数が介護に関わる可能性が高い、という現実がある。

この事実だけを見ても、企業として介護との両立について取り組むことは大変重要だと実感しました。

講師の実体験が響いた~様々な両立の形・体験事例を共有したい

【丸毛様】

介護に限らず、育児も含めて「制度はあるけれど、内容があまり知られていない」という課題が以前からありました。そのため、制度活用ハンドブックを作成し、イントラネットや社内報でも周知・活用促進を図っていきたいと考えています。

【河村様】

どのように活用するのかを理解していただく、という意味でも、社内で事例の共有が必要ではないかと思っています。

ただ、育児に関する事例共有は比較的協力してくださる方がいるのですが、介護事例については、お話してくださる方がまだ少ないのです。

ですから、今回両立支援セミナーで講師がご自身の介護体験を語ってくださったのは非常に有難く、体験談を初めて聞いたという社員も多くいました。

社内にも同様の経験をしている社員はいるはずですが、共有するには慎重さも必要です。

事例の集め方、共有方法など、丁寧に設計したいと考えています。

ビジネスケアラー支援なら
LCATにお任せください

診断・ラーニング体験
研修・セミナー体験はこちら