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ビジネスケアラー増加による経済損失の予測は約9兆円?経済損失がなぜ起きてしまうのか解説!

目次
ビジネスケアラーとは
ビジネスケアラー支援は企業の経営課題
ビジネスケアラーが増加する原因は?
ビジネスケアラー増加による経済損失
ビジネスケアラー増加で経済損失が起きてしまう理由
仕事と介護の両立支援で企業に求められること
まとめ

ビジネスケアラーとは

ビジネスケアラーとは、仕事(ビジネス)と家族等の介護(ケア)を両立している人のことです。
これから大幅に増えることが見込まれ、社会全体の課題として大きな注目を集めています。
国もビジネスケアラー支援の取り組みを始めており、経済産業省からは2024年3月、「仕事と介護の両立支援に関する経営者向けガイドライン」が公表されました。
ガイドライン公表は「ビジネスケアラー支援に企業が取り組む必要がある」と明示された形となり、企業では自社の実態に即した両立支援の取り組みをしていく必要があります。

ビジネスケアラー支援は企業の経営課題

ビジネスケアラーは増加の傾向にあります。
経済産業省のデータでは、家族介護者とビジネスケアラーは2030年まで増え続けると予想されているのです。

2025年には家族を介護する人が795万人、そのうち約4割の307万人がビジネスケアラー

仕事と介護を両立している状況と予想されています。

その後、2030年にはビジネスケアラーは318万人まで増えると見込まれます。

ビジネスケアラーが増加する原因は?

なぜビジネスケアラーが増えていくのでしょうか。主な原因と考えられていることを3つご紹介いたします。

高齢者人口の増加 

「2025年問題」と言われる2025年、団塊の世代が後期高齢者(75歳)に達し、75歳以上の方が全人口の約18%になると推計されています。

個人差はありますが、介護・ケアが必要になる方が増えるのは必至です。

参考:厚生労働省 我が国の人口について

働き手の高齢化

企業の正規雇用労働者数を見ると、40代後半~50代後半の方が増えています。

ビジネスケアラーの発現率は40代後半から急増(※)しますが、2023年9月時点で既に企業の正規雇用者の46.3%が45歳以上となっており、働き手の半数が介護と仕事の両立を迫られる状態、または予備軍と言えます。

※LCAT(仕事と介護の両立支援クラウド)による調査

参考:労働政策研究・研修機構 各年齢階級の正規雇用者数

担い手の変化

家族の形が変化し、共働き世帯や結婚を選択しない方も増えています。

これまでは夫婦のどちらかが介護に専念しているという家族も多くありましたが、現在では夫婦どちらも働いている場合が多く、どちらも仕事と介護を両立する必要があります。

また、少子化のため、兄弟姉妹で分担してケアを担う、ということも難しくなってきました。

参考:内閣府 共働き世帯数の推移

ビジネスケアラー増加による経済損失

ビジネスケアラーが増えることによる経済損失は非常に大きいと考えられています。

経済産業省の試算ではその額は9兆円以上にのぼり、中でも「仕事と介護の両立困難による労働生産性損失額」が大部分を占めます。

介護離職に比べ、仕事と介護を両立するビジネスケアラーの経済損失にはこれまであまり対策がとられてきませんでした。

しかし、労働力不足社会において、貴重な人材を失わないためにも、企業の取り組みが必要になってきたと言えます。

ビジネスケアラー増加で経済損失が起きてしまう理由

なぜビジネスケアラーが増えると、経済損失が起きてしまうのでしょうか。

ビジネスケアラーが抱える問題について整理していきましょう。

パフォーマンスの低下

経済産業省が行ったビジネスケアラーの実態に関する調査結果によると

「自身の仕事のパフォーマンスが低下している」と回答した方が3割を超えました。

また、平均で27.5%程度のパフォーマンス低下があるという結果も示されています。

介護は短期的に終わることが少なく、多くの人が長期的に行います。

支援が十分に行われない場合、大企業では6億円、中小企業で713万円ほどの損失が出るとの試算もあります。

参考:経済産業省委託調査(日本総合研究所)「令和4年度ヘルスケアサービス社会実装事業 (サステナブルな高齢化社会の実現に向けた調査)報告書」(2023年) P.72

経済産業省 仕事と介護の両立支援に関する経営者向けガイドライン

「隠れ介護」や制度を利用しないことによる労働生産性の低下

介護にかかる物理的、心理的負担がある、必要な知識・情報が足りない、といった悩みをビジネスケアラーは抱えます。

また、会社に迷惑をかけてしまう、将来のキャリアにも影響が出てしまうのではないか、等を気に病み、なかなか職場に打ち明けられない方や、介護休暇制度などを利用しない方もおり、効率的に介護が行えないため、結果的にパフォーマンスが低下することがあります。

介護離職による損失

仕事と介護を両立するのが難しいと考えてしまうと、離職を選択してしまう方が増えます。

経験豊富な人材や管理職が離職すると、これまでの育成費用はもちろん、代替人員採用や教育にもコストや時間を要することになり、企業にとって大きな経済損失につながります

仕事と介護の両立支援で企業に求められること

ビジネスケアラーをサポートしていくことは、企業にとって必須の課題と言えます。

では、どのような取り組みが求められているのでしょうか。

実態の把握と対応

両立を支援する制度については、多くの企業ですでに整備されてきています。

ただ、制度があっても実際には利用されていない、実態に即した制度運用になっていない、という例もあります。まずは組織内での影響・リスクを把握することが必要です。

そのうえで、実情とリソースに応じて人事労務制度を充実させたり、基礎情報実際に利用される制度づくりをしていくことが非常に大切と言えます。

介護休業制度など介護に関する制度が実態に即したものであるか見直してみたり、従業員の状況によって柔軟に働ける勤務形態を導入したり、制度や環境を整備していきましょう。

リモートワークができたり、フレックス制を選べたり、選択肢が多ければビジネスケアラーが働きやすくなります。

ただし、リモートワークは逆に同居を勧めていると捉えられ、負担が増してしまうこともあります。何よりも、ビジネスケアラーである本人の意見や状況に応じて柔軟にサポートできることが重要です。

実際に介護との両立で悩んでいる従業員がいれば、制度づくりに協力してもらい利用してもらうのも良いでしょう。

介護サービスなどのリテラシー共有

介護に関する知識を従業員に共有することも、企業がビジネスケアラーのためにできることのひとつです。

多くの方は介護に関する知識を学ぶ機会を得ないままでいます。知識さえあれば介護サービスを利用することもできますし、仕事を続けられる可能性も高まります。

制度やサービスを紹介するだけでなく、実際に利用している人の声を届けることも有効でしょう。

相談しやすい環境づくり

両立できないと思われてキャリアに影響が出るのではないかと思ったり、すでに会社に迷惑をかけているのにこれ以上かけられないと思っていたり、ビジネスケアラーは1人で悩みを抱え込んでしまうことがあります。

中にはビジネスケアラーであること自体を隠している方もいらっしゃいます。

気軽に相談できるような相談窓口を設置し、周知してどんどん利用してもらうことが大切です。また、アンケートをとるなどして、従業員の介護に関する実態を把握しましょう。

実際に現場にいる上司が、ビジネスケアラーについて正しく理解することも非常に重要です。

まとめ

仕事と介護を両立しなければならないビジネスケアラーは増え続け、その経済損失は非常に大きいと考えられています。

ビジネスケアラーの経済損失を少しでも抑えるために、企業ができることを考えていく必要があるでしょう。仕事と介護の両立の実態に即した制度づくり、介護サービスなどのリテラシー共有、相談しやすい環境づくりなどを進め、ビジネスケアラーをサポートしていくことが大切です。

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