仕事と介護の両立支援Q&A
2024年3月、経済産業省から「仕事と介護の両立支援に関する経営者向けガイドライン」が公表、さらには2025年4月に改正育児・介護休業法が順次施行されるなど、企業にとって「仕事と介護の両立支援」は必須課題となってきました。
例えば、従業員に対し、介護に直面する前の早い段階(40歳程度)で両立支援についての情報を提供することは義務化されていますし、管理職については、研修を受けたことのある状態にする必要があります。
(参考記事:仕事と介護の両立経営者向けガイドライン解説、2025年4月改正施行育児介護休業法解説)
しかし、いざ施策を立案するとなると、何から始めるのか、どのように継続していくのか、優先順位付けを含めて悩まれるのではないでしょうか。
この記事では、リクシス/チェンジウェーブグループで経営者、企業人事・DE&I推進ご担当者の皆様からご相談を受けることの多い項目についてご紹介していきます。
ご参考にしていただけましたら幸いです。
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企業様の状況によって異なりますが、国の動き、法改正などもあり、ビジネスケアラーの課題に関心を持たれる経営層の方々は増えてきているように思います。
一方で、まだまだ難しさを感じていらっしゃる企業ご担当者も多くいらっしゃいます。他の企業様の実例を含め、幾つかのアプローチをご紹介させていただきます。
自社の採用・人材戦略、働き手のエンゲージメント向上等において「仕事と介護の両立支援」がどのような影響を及ぼすのか、について、データを交えて伝え、「介護を支援する」のではなく「働く」を支援する取り組みである、というメッセージを込めた、という企業様があります。
「女性活躍推進」「人的資本経営」「DEI推進」といったテーマと絡め、将来の生産性低下、労働力不足、育成してきた女性幹部の離職等のリスクが発生することについてお伝えし、戦略の中に位置づけた、という例です。
経済産業省の発表では、両立が困難になれば、従業員の業務効率の低下や介護離職につながるため、その経済損失は大きいとしています。2030年の損失額試算は約9・2兆円にのぼり、その8割強は労働生産性の損失によるものです。
また、いわゆる「ビジネスケアラー」である管理職(男女)の意識調査(LCAT 2023年データ)を見ると、女性管理職が介護に対して持つ負担感は、男性管理職よりもかなり高いレベルにあります。7割が「物理的、精神的に辛い」、5割が「キャリア継続に不安」と答えています。
DE&I推進に取り組むある企業では、女性登用を進める中で従業員から「介護との両立」への懸念を示されたそうです。このため、仕事と介護の両立についても、DE&Iの一部として取り組んでおられます。(三井化学様事例)
このほか、女性登用とビジネスケアラー支援に関する課題については、こちらの記事(ビジネスケアラー支援とアンコンシャス・バイアス)にデータを交えて記載しています。よろしければご参考になさってください。
健康経営優良法人、ホワイト500には「仕事と育児・介護の両立支援に関する設問」が設定されています。「適切な働き方の実現を問う設問」と合わせて取り組むことが、認定要件になっています。
人材確保の観点からも、健康経営を重視される経営層もいらっしゃるのではないでしょうか。
一方、「義務」という観点で見ると、2025年4月から順次施行される改正育児介護休業法では、以下の3点が義務化されます。
●介護に直面した旨の申出をした労働者に対する個別の周知・意向確認の措置
(※面談・書面交付等による。詳細は省令。)
●介護に直面する前の早い段階(40歳等)での両立支援制度等に関する情報提供
●仕事と介護の両立支援制度を利用しやすい雇用環境の整備
(※研修、相談窓口設置等のいずれかを選択して措置。詳細は省令。)
義務化された「研修」「相談窓口の設置」には対応する必要があります。
また、経済産業省から発表された「経営者向けガイドライン」では、両立支援のステップが示されています。実態把握、そして、リテラシー取得のための教育など、進め方の指針を念頭においたうえで、自社の課題感・ご状況によって優先度を決められることをお薦めします。
弊社では、ガイドラインに沿ったソリューションをご提供しております。施策の導入ステップなどについては、ぜひご相談ください。
経営層と担当部門が「共に」取り組むために、最も必要なのは何なのか。
弊社が企画・運営を務めるExcellent Care Company Club(仕事と介護の両立支援に取り組む企業横断コンソーシアム)では、2024年の分科会テーマのひとつに「経営層と共に取り組むためのヒント 課題認識・関心度を高め、組織的支援につなげるには」を挙げました。
この分科会の最終発表では、経済産業省の資料をもとに企業の経済損失額を計算して可視化。「企業への影響可能性」をよりリアルに訴求できるものとして、試算してみることを提案しました。
引用元:経済産業省 仕事と介護の両立支援に関する全ての企業に知ってもらいたい介護両立支援のアクション
経営者向けガイドライン 8p
こうした試算や、パフォーマンス低下についての記事(こちら)には、企業に与える経済的インパクトを分かりやすく示す力があります。
一方で、上述のECC分科会発表では、ECCメンバーが企業の経営層にヒアリングを行ったことが紹介され、「経営層は、当事者である従業員の生声も聞きたいし、それに動かされることもある」というコメントが挙げられました。
経済インパクト等、定量で示せる理由はもちろん必要ですが、実態調査や研修実施後のアンケートなどで集めた、従業員の”仕事と介護の両立に関しての不安”、”会社や同僚、上司に対して理解して欲しいこと”、なども提示できると良いかもしれません。
参考記事
ビジネスケアラー増加による経済損失の予測は約9兆円?経済損失がなぜ起きてしまうのか解説!
仕事と介護の両立支援:間違えてはいけないポイント②施策立案と実態把握
次回は研修、相談窓口等、具体的な施策実施の際の注意点についてお伝えします。
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