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働き続けられる環境づくり~ダブルケアラー支援で企業ができること

目次
・仕事と介護の両立困難が企業に与える影響
・ダブルケアラーはどのくらい増える?企業が備えるべき理由
・ダブルケアラーは何に困っている?3つの課題と必要な準備
・ダブルケアラー支援が組織の持続性を高める理由
・企業ができる、実効的な両立支援

仕事と介護の両立困難が企業に与える影響

仕事と介護(ケア)を両立する「ビジネスケアラー」は年々増加しており、2030年には318万人に達すると推計されています。経済産業省の試算によれば、経済損失は9兆円以上にのぼり、その大部分を占めるのが「仕事と介護の両立困難による労働生産性の低下」です。
労働力不足社が深刻化する中、企業にとって、貴重な人材の流出を防ぎ、持続可能な雇用環境を整備することは急務となってきています。
(参照:ビジネスケアラー増加で経済損失はなぜ起きるのか  https://lcat.jp/info/detail/20240702394/

企業において、ビジネスケアラーの増加がもたらすリスクとして、次のような点が挙げられます。
・労働生産性の低下と望まない離職・休職につながるリスク
・管理職世代のパフォーマンス低下と職場からの離脱
・人材の流出と採用競争力の低下

本記事では、「仕事と介護の両立」に焦点をあてる中でも、特に「ダブルケアラー」~子育てと介護を同時に抱える人が直面する問題について考え、企業に求められる対応策を探ります。

ダブルケアラーはどのくらい増える?企業が備えるべき理由

近年、30代後半から40代での出産が増加し、現在では新生児の約3割が「母親の年齢35歳以上」 となっています。

グラフ, 折れ線グラフ

AI によって生成されたコンテンツは間違っている可能性があります。

一方、ビジネスケアラーとその予備軍の発現率は、40代後半から急増する傾向にあります。
第一子が生まれてから10年以内に親の介護不安が現実化するケース、つまり、育児と介護が重なって発生する可能性が高まっているのです。

実際、LCAT(※1)利用者データによると、40代後半からビジネスケアラーとなる確率が急増しています。企業の従業員データを見ても
・40代後半では18人に1人
・50代前半では8人に1人
「12歳以下の子育てと介護を両立している」ことが分かります。

ダブルケアラーは何に困っている?3つの課題と必要な準備

では、ダブルケアラーやその予備軍である方々は、どのような実態に直面しているのでしょうか?
LCAT(仕事と介護の両立支援プログラム、チェンジウェーブグループ提供)に寄せられたコメントからは、 ダブルケアに対する強い不安が多く見受けられます。

■ダブルケアラーの声
「親が昨年度、要介護認定を受けました。母の通院同伴や食事の準備は同居の父に頼っていますが、父も高齢です。もし父の健康にも問題が生じたら、私や兄弟が日常的な介護を担うことになります。
しかし、現在の仕事はとても忙しく、両立は困難なのではないかと将来が不安です」

「母が胸椎骨折で入院しました。退院後、今までのように一人暮らしができるのか、日常的な介護が必要になるのか、分かりません。
自分の子供もまだ小学生なので、育児と介護と仕事、すべてこなすのは難しいと感じています」

(LCATコメントより。プライバシーに配慮して一部のみ抜粋しています)

グラフ, 円グラフ

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こうした不安を抱えながらも、ダブルケアラーの多くは「仕事とケアを両立したい」「仕事だけ、ケアだけ、にはしたくない」と考えています。
ただ、介護には、コントロールしにくい事情に対応しなければならない場合が多くあるため、理想とするバランスよりも介護を優先せざるを得ない状況が生じやすいことは大きな悩みとなります。

■ダブルケアに備えるために重要な3つの準備

このような状況に備えるために事前準備は不可欠です。
以下に3つのポイントをご紹介します。

自分の「両立方針」を考えておく

自分はどのように仕事をしていきたいか、そのうえでケアはどう差配するか、という順番で考えておくことが、初動体 制構築のスピードとその先の負担を左右する

情報リテラシーを持つ

育児と介護では、必要な情報と対処法は全く違います。介護は状況が予測しにくく、突発的な対応が必要になるケースが多いため、物理的・心理的な負担が大きくなりやすい傾向があります。
利用できるサービスについて等の適切な情報を事前に得る、または「どこで情報が得られるか」分かっておくことで不安も軽減されます。

※ご参考/介護サービスを知る・さがす ライフサポートナビ

資金の確保

介護保険制度だけでは十分に対応できないケースもあります。保険外サービスの活用も視野に入れておく必要があります。

ダブルケアラー支援が組織の持続性を高める理由

育児と介護が同時並行するダブルケアラー世代は、企業内で管理職層に該当することが多い世代です。
中核となり、重要なポジションを担う管理職の働き方やエンゲージメントが組織に影響を与えるのは言うまでもありません。
経済産業省によれば、介護が発生すると「約3割のパフォーマンス低下」がありえるとされています。
特に管理職以上の女性においては、男性よりも影響が大きいことが分かっています。
例えば、部長層でのパフォーマンス低下は男性約20%、女性約30%とされており、10%の差があります。性別役割意識等が影響し、育児、介護を担う割合が女性に高いことが背景にあると考えられます。

出典:株式会社日本総合研究所「令和4年度ヘルスケアサービス社会実装事業(サステナブルな高齢化社会の実現に向けた調査)報告書」ビジネスケアラー向けアンケート調査結果より)

一方で、育児や介護を通じて培われる「マルチタスク能力の向上」「多様性への理解」「交渉力の向上」「業務、スケジュールの調整力」「レジリエンス」といったスキル、能力は組織に還元されると考えられます。
ダイバーシティ推進、女性活躍推進の枠にとどまらず、企業における両立支援の強化は避けて通れない課題となっているのです。

企業ができる、実効的な両立支援

では、企業のダブルケアラー支援には、どのようなものがあるでしょうか?
介護、仕事の側面から考えてみます。


①介護に関して
・プッシュ型の情報提供、リテラシー取得支援
・実態の把握と社内の理解促進
・マネージャー向けの教育(部下がダブルケアを抱えた際の対応について)

自分が決めた「両立方針」に従って介護をプロに任せる、自分は仕事と役割をマネジメントする、といったことが両立のカギとなります。

②仕事に関して
2025年、改正育児・介護休業法が順次施行されます。
柔軟な働き方の選択肢が拡充され、働きやすい職場づくりが進められることになるのは明らかです。

しかし一方で、介護・育児を担う社員本人も、また、周囲も「制約がある」と考えてしまい、キャリア構築が阻害されるとしたら、リスクがあります。
チェンジウェーブグループの調査では、介護について相談することで、仕事にマイナスの影響が出るのではないか、と心配する声が多くありました。

■企業で実施可能な施策
・柔軟な働き方の選択肢拡充(2025年4月改正育児介護休業法への対応も含む)
・アンコンシャス・バイアス(無意識の性別バイアス)をコントロールするための継続学習
仕事への意識・環境には個人差があり、女性は家庭を優先する、育児・介護を担う女性は業務を制限したほうが良い、といった思い込みや配慮が悪影響を及ぼすこともある、と認識することが必要です。
・キャリア継続支援
勤務時間と成果をどのように評価するか、また、中長期でキャリアを考えられるような意識づけなど、人事部門主導で行える取り組みがあります。
・男性の家事、育児参画推進

■現場からの声

あるダブルケアラーの方が、企業への要望として次のような声を寄せてくださいました。

「働く時間や場所を選択できる制度があったとしても、制度を利用すると周囲に迷惑がかかるのではという不安があります。上司や同僚に現状を話しても大丈夫だ、と思える環境を整えてほしい。

社内で声を上げられる環境を作り、出された声を会社が受け止めて施策に活かしてほしい。

もちろん、自分も、仕事をより大事にしていきます。

私だけではなく、これから増えるビジネスケアラーが安心してキャリアを継続できると良いと思います。」

リクシス/チェンジウェーブグループでは、ビジネスケアラー両立支援として、実態把握からセミナー、研修、相談窓口のご紹介まで、一気通貫にご支援しています。

DE&I推進や女性活躍推進、マネジメント変革なども含め、貴社のご状況にあわせたアクション選定など、お気軽にご相談ください。

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